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演奏者のための実用的ななんちゃって音楽理論 実践編その1 [音楽表現]





実践編では具体的な曲を使って説明していきます。今回はソルの練習曲Op31-3です。

1.曲の構造
アウフタクトの8分音符2つの小節は含めず小節数を数えると34小節あります。譜例に縦線を書き込んでいるのがフレーズの区切りです。最初の4小節+4小節で大きな節を作っており、これをAとすると、次の8小節はBになり、その次の8小節はまた最初のAに似た部分でA'、それ以降は結部(コーダ)になっています。A+B+A'+コーダという構造をしていることが楽譜の景色から読み取れます。
Sor_31-3.png
2.拍子
この曲は8分の6拍子です。8分の6拍子は3+3で大きな2拍子、拍の中に小さな3拍子があります。演奏する上で難しいのは3つの8分音符の固まりと2拍子を意識しすぎると所謂タテノリという杭を打ち込むような重たい演奏になってしまうことです。ラタタラタタと軽いステップで流れるようにリズム感を目標にしてください。

3.アウフタクト
この曲はフレーズの開始が拍子の途中にあるアウフタクト(弱起)の曲です。アウフタクトで始まる曲はその拍子は持つ拍節感の途中から開始して欲しいという意味ですから、拍節のリズム感は小節の1拍目からの6拍子であり、リズムの重心は1拍目にあります。ですからアウフタクトの音形は次の小節の1拍目に向かうように演奏する必要があり、聴いている人にリズムの開始点は3つ目の音だと伝わる必要があります。ですから最初の2つの8分音符は軽く演奏する必要があります。軽いというのは単純に弱いという意味ではありませんし、次の1拍目も強ければ良いというものでもありません。要は聴いている人が自然に6拍子のリズムを感じることが出来れば良いのです。

4.調性
譜例に書いてあるように調号から想定される長調と短調を候補として曲の最後や最初の音や和声から長調か短調かを判断してください。この曲はニ長調です。

5.和声
ニ長調のトニックはコードDで、サブドミナントはコードGであり、ドミナントおよびドミナントセブンスはAとA7です。これだけを表記したものが次の楽譜です。3段目の前後は一旦謎の区間とします。一見してトニックとドミナントセブンスが多いことが分かります。
Sor_31-3Code.png
6.和声の変化点
上の譜例を見ると小節の中で和声が変化していることが分かります。そして特徴的には低音声部がレ(d)やラ(a)というギターの開放弦が多用されています。これは単に音を出すだけなら左手の押さえが必要ありませんので簡単です。しかしながらA7の時に音名d(記譜のレ)が残ると和音の響きが濁ります。ピアノという楽器にはペダルという音を延ばす仕組みがありますが、和声の変化する場所ではペダルを踏み直して響が濁らないようにします。ギターも同じでピアノでペダルを離す操作に相当する音を消すという操作が必要になります。消音というギターの技術についてここでは説明しませんが、レを出す時にはラを消音し、ラを出すときにはレを消音するという技術が必要になります。

7.部分転調
この曲の9小節目(1アウフタクトを含む)からの8小節間の謎の区間は転調してると考えると理解出来ます。転調は調号を変えて明示的に行うこともありますが、この箇所のように結果的に転調している場合もあります。転調と言わずに借用と説明することも出来ますが、分析として正しいかよりも演奏する上での理解で十分です。(だからなんちゃって理論です。)
この箇所はイ長調に転調していると考えるととてもすっきり理解できます。9小節目から1小節毎にD,T,D7,T,D,T,D7,Tです。コードで書けばE,A,E7,A,E,A,E7,Aとなり、16小節目のAのコードはニ長調のドミナントではなく、イ長調のトニックに解決しています。17小節目からはまたニ長調に戻っています。

8.非和声音
以上の分析からもう一度最初の譜例を見てください。フレーズの区切りと赤丸で非和声音に印をつけてあります。

9.装飾音
コーダ部分には前打音(短前打音)の装飾音符が出てきます。装飾音を前に出す、丁度に出すなどと演奏のタイミングを説明しますが、装飾音の演奏法は時代様式で異なります。バロックや古典派の前期はオンビートつまり拍の頭に装飾音を演奏します。ですから装飾の付いた本来の音は拍よりも遅いタイミングで発音されることになります。これはアポジャトゥーラ(倚音)の非和声音としての和声的な機能を演奏に取り入れることを重視しているからです。古典派も後期になり、ベートーヴェン位からはオンビートで演奏するか、ビフォアービートつまり装飾を前に出して、実音をオンビートに置く方法に移行していきます。ですからベートーヴェンや同じような時代のソルではオンビートにするかビフォアービートにするかはケースバイケースで議論を呼ぶ所になります。この曲の場合はどちらも有りだと思いますが、前に出すなら短く鋭く装飾としてのアクセント効果を狙い、オンビートなら短すぎずに倚音としての音程感を出すと良いでしょう。

10.終止
最後から4小節前にドミナントセブンスが現れ、最後の3小節は同じトニックコードの連続で終わります。こういう場合ではドミナトセブンスからトニックの終止による解決感を出した後でトニックの4分音符の4つの連続はテンポも音量も変化させず、最後の小節に入る時に少し溜めを作り、最後の和音を少し弱く、柔らかく演奏すると曲の終わりらしくなります。

11.動画で解説
文章で伝えずらいことを動画にしてみました。素人が喋っていますので言い間違い、聴き取りにくいなどはご容赦ください。




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