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演奏者のための実用的ななんちゃって音楽理論(本編その10) [音楽表現]





0.ひとまず本編終了
ここまでの話を整理、補足して一旦音楽理論的な話は閉じます。あくまで実用上においてこれだけは知っておくと良いという内容に止めていますので、これはほんの入り口です。ですがこれだけでも十分に説得力のある演奏に繋がりますし、この先のことは具体的な音楽経験の中で深めていってください。

1.やさしい楽曲分析の手順
(1)その曲の調性を調べること。(途中に転調があればそれもチェック)
(2)旋律(主要な声部)の中の非和声音を除外しながら分かる範囲の和音を調べる。
  和音は分かる範囲でその調におけるT,S,D,D7,それ以外で良い。
(3)曲全体の構造、節やフレーズを見極める。
(4)フレーズの中の緊張度の強さを和声、非和声音、拍節、音型、などから調べる。
(5)フレーズ間の緊張度を見極める。
(6)フレーズの中のピーク、節の中のピーク、曲全体のピークを見極め、
  曲全体での高まり具合の配分を考える。
(7)フレーズの中の細かな抑揚・起伏を全体の中の起伏の中に収さめる。
抑揚の合成.png

2.再び強調
強調するのは旋律の中の音だけではありません。和声だけでなく様々な要素が抑揚を生だし、音楽表現を濃くしていきます。抑揚つまり音の対比をf,pなどの記号だけでなく音符から考えるようになると、旋律だけでなく、内声の動き、低音声部の動きなどの中にも抑揚と表情があることに気付くはずです。例えば低音声部が順次進行しているとか、臨時記号という目立つ印を見つけたり、内声に半音の動きがあるとか、何かに面白さを見つけてこの音形を聴いている人に伝えたいと思うようになると楽譜に書いてある音をパズルゲームのように今これ、次はあれという追いかけるだけの演奏ではなく、しっかりと全体を把握した上で人に伝える演奏になります。モグラ叩きゲームは反射神経を競うゲームですが、演奏にはモグラの出る順番をはるか先まで知っていることが求められます。

3.非和声音の補足
非和声音というのは非常に重要ですが、詳しい説明は書きませんでした。非和声音には刺繍、経過、掛留、先取音、逸音など種類があります。分かっているとより深い演奏が出来ますが、当面は和声から外れる音と大雑把な認識でもかまいません。重要なのは和声から外れた音というのは前後には和声に嵌る音があり、そこに対比があり、緊張があります。つまり非和声音は緊張度の高い強調すべき歌う音ということを理解していればOKです。
ただ非和声音の中でこれだけは特別知っておいた方が良いというものがあり、それは倚音(いおん)アポジャトゥーラです。アポジャトゥーラ(appoggiatura)=前打音で装飾音譜として書かれる物もありますし、実際の音符として書かれる場合もあります。典型例で言わるのはビートルズのイエスタデイの歌い出しの音です。つまり倚音は非和声音が和声音に解決する分かりやすい緊張から弛緩を表現します。アポジャトゥーラという言葉を聞く機会が多いと思いますが、終止とともに和声の解決という演奏効果を演出する立役者だからです。

4.演奏技術と演奏表現
音楽表現とは対比を抑揚として演奏に反映することという趣旨で書いてきました。細かな強弱という変化を付けるということなら分かりやすいですが、抑揚には細かなリズムの揺らぎも必要です。ルバートとかアギーギクということですね。
それに対して楽器の基礎的な訓練において音程、強さ、リズムなどを正確に出せることが必要です。つまり音楽表現における抑揚をいくら意識しても、まず抑揚を排した正確で均質な音を出す基礎的技術というものは欠かせません。稀ですが機械的に正確で均質な音が並ぶこと自体を求める音楽というものも存在します。ショスタコービチやプロコフィエフなどある意味人間性を排した機械的な音楽の中に冷徹な狂気を表現するというような曲もあります。つまり機械的正確性も抑揚の一つでさえあるのです。技術だけを求めると正確さ早さなどだけに目を向けてしまうことがありますが、技術は音楽表現のために必要な道具であるという意識を持ち、道具を整えることと、それを使って音楽を構築するということは常に並列に行われる必要があります。

一旦終了というのはとりあえずの理論的な解説の本編を終了ということで、次回からは具体例を使った実践編に進みます。



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