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演奏者のための実用的ななんちゃって音楽理論(本編その9) [音楽表現]





0.音楽的な頂点を探すのは簡単ではない
演奏者としての生理として高い音が響き渡ることに喜びを見出してしまいます。歌を歌っても最高音が決まると嬉しい、楽器でも高い音が抜けて響きわたると気持ちがいい、これは演奏者としての達成感でもあり、高い音には魅力があります。ですがそのことが安易に音楽的な頂点を高い音に設定してしまう要因となります。本当にその音がピークなのかは良く吟味する必要があります。何処をピークに考えるかは文章や言葉でも同じです。「私はあたなが好きです。」と言葉で話す場合に強調する単語は「私」「あなた」「好き」のどれかは状況により異なるでしょう。ですから「好き」が一番重要だろうと短絡的には言えません。ですが「私」を強調する状況というのはかなり特別な場合かもしれません。

1.典型例
誰もが知っている「愛のロマンス」を見てます。下記の楽譜はメロディだけを抜き出した物です。良く耳にする典型的な演奏として5小節目の1拍目の高いミの音を強調する演奏です。解釈は様々なのでそれが間違いとまでは言いません。ただその前の4小節目の上行音型の到達点としての最高音という分かりやすさ、演奏者としての気持ち良さだけでそうなっているならもう少し考えてみる必要があります。
romance.png
異論があるかもしれませんが、まず全体を見て4小節フレーズに区切ります。この曲の和声進行は7小節目までEmのままです。7小節名の3拍からAmにする楽譜もあるようですが、私はEmの方が音楽構造に深みが出るのでそちらを支持します(非和声音である先取音の解決)。フレーズの中の抑揚・起伏という話をしましたが、複数のフレーズにより節を作ります。節(愛のロマンスの前半のマイナー部分)の中にも抑揚・起伏があり、大きくはフレーズ単位の起伏です。4つのフレーズを見ると和声的な複雑さを見ても起承転結を構成しています。起となる最初の4小節はまだトニックのままです。承の後半でサブドミントとなり、転にてドミナントが現れます。そして結の中で終止します。承の中でも和声的な緊張が高まるのは後半であり、最初の最高音のミではありません。4小節フレーズとした場合には起承転の順に緊張度が高まり、結にて終息すると考えるのが自然です。各フレーズの中には非和声音が散りばめられており、その和声的な緊張を味わいつつ、4小節の中で自然なクレッシェンド、ディミネンドという起伏があり、その山がフレーズ毎に大きくなると考えると音楽的なピークは9から10小節にあると考えることが出来ます。これは私個人がこのように解釈すると良いと思うという話で違う見解はあってかまいません。

2.強調するということ
今まで音楽的な緊張が高くなる部分を強調すると何気に書いてきました。強調するとは何でしょうか。単純に考えれば音量を大きくするとなりそうですが、強調の方法は沢山あります。
・音量を大きくする
・アクセントやsfのように鋭さや減衰を伴う刺激
・音を短く強くする
・音を長くする
・音を揺らす
・音色を変える
強調には痛みを伴うような刺激もあれば、包み込むような豊かさ、広がりを感じさせる、明るさを感じさせる、奥深さを感じさせる、暖かさ、冷たさ、など沢山の表現方法があります。強調に変わる言葉として、「この音を、このフレーズをもっと歌って」というように「歌う」という言葉を使います。「歌う」もその方法は一つだけではありませんが、「心を込めて歌う」のようにその音を大切に扱うと考えると単に音量のことではないと理解できるはずです。
「愛のロマンス」の場合は音の強さ(タッチの強さ)ではなく、音の幅、豊かさ、時間ギリギリまで、あるいははみ出してもその音を味わうようにという長さを意識すると「歌う」という強調に繋がると思います。


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