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音楽理論の必要性 [演奏法]

私はアマチュアのオーケストラ奏者として活動してきた中で、ずっと専門教育を受けていないというコンプレックスを抱えてきました。コンプレックスは2つあり、一つは系統立った音楽理論を学んでいないこと、もう一つは狭義の意味でのソルフェージュ(視唱)や聴音の訓練を受けていないことです。専門教育とは音楽大学だけではなく子供の頃からピアノやヴァイオリンを習っていることも含みます。アマチュア奏者でも小さい頃からピアノやヴァイオリンを習ってきた人は優れた音感を身に付けていることが多いです。楽器を演奏する上で絶対音感が必要とは思っておりませんし、相対音感は訓練することで大人でも鍛えることは出来ます。
ギターは調弦以外に音程を作るという意識はあまり持たないかもしれませんが、オーケストラの殆どの楽器は音程は機械的に決まるものではなく、常に意識的に調整して演奏しています。実はギターも無意識に音程を狂わす弾き方をしていたり、逆に意識的に音程を変化させることも出来るのです。調弦の狂いを最小限にするという意味でもギターも演奏中に常に音程は意識している必要があります。
話がそれましたがオーケストラでは常に意識的に音程を作る必要があり、私も長年の経験から今演奏している曲の次に出す音を正しく認識することはある程度身についています。ですが今でも聴音のテストで出されるような2つの音の音程間隔を言い当てたりするのは苦手で瞬時に答えることは出来ません。
ただアマチュアの良いところはプロと違い時間の制約がないことです。今取り組んでいる曲のスコアを読み、参考音源を聴くことで少なくとも楽譜に書かれた音の関係を時間をかけて理解することが出来ます。一度理解出来れば周りの人の音や前後関係から正しい音程を認識することが可能になってきます。ですからアマチュアであっても時間をかけることで能力の不足をある程度補うことは出来ます。

もう一つの音楽理論ですが、これはアマチュアであっても説得力のある音楽表現をする上では必要な知識です。まずは最低限楽譜が読めること、そこに書かれた記号の意味、調号の意味、調性などは知った上で、音楽形式(楽式)や和声、特に機能和声の理解が必要になります。勉強してみようと和声理論の本を読んで挫折した人も多いのはないでしょうか。和声理論など作曲する上では必要だろうが演奏するのに必要なかろうと思うかもしれません。私も何度も挫折した方ですが、最低限の知識だけでも押えておくべきと思います。実際のところ理論的な知識は深い程、演奏の質も高くなるものだと思いますが、基礎的なことを知るだけでも演奏に大いに役立ちます。

さて、ここで一つ問題が生じます。ここで書きたいことは演奏者としてより良い演奏表現を行うために必要な音楽理論です。音楽も一つの学問ですから理論の専門書は山程あります。理論書は基本的に楽曲がどのような構造で成り立っているのか説明する立場で書かれています。和声を知ろうと和声学の専門書などを手にとっても難解ですし、挫折する可能性が大きいのです。それでも平易な説明の基礎的な入門書などである程度基礎的な知識は身に付けたとします。例えばある曲の和声進行を分析したとしてここはトニカ、ここはドミナント7、ここはディミニッシュとか分かるようになったとして、ではそれを踏まえてどう演奏表現に結びつけるのかという方法論を説明している書物は実は少ないです。その理由としては楽器演奏というのは芸事であり、基本は師弟関係の中で伝承される部分が大きいことがあります。ピアノにしてもヴァイオリンにしても先生に習うことなく、一流の演奏家になることはまず不可能でしょう。ですからレッスンの過程において楽譜をどう読み解き、それをどのように音楽表現に繋げるのかを学んでいるのです。
では私自身はどのように学んできたのか考えると、やはりオーケストラ活動の中でプロの指導を受けることの積み重ねで得た知識が大きいと思います。ですがそれ以外に音楽表現に関する参考書籍も読むようにしてきました。
今手元にあるものを紹介しますと
フィリップ・ファーカス プロプレーヤーの演奏技法
熊田為広 演奏のための楽曲分析法
保科洋 生きた音楽表現へのアプローチ
藤原義章 リズムはゆらぐ
などになります。
またまだ読破していませんが、和声をあらためて勉強してみようと
島岡譲の「和声と楽式のアナリーゼ」と「和声のしくみ・楽曲のしくみ」を買ってみました。

音楽は心だとか、感受性、人間性で表現されるものと言う人もいるかもしれません。理屈ではなく感じるままに演奏すれば良いと思うかもしれません。確かにポピュラー音楽の世界では楽譜も読めないという人でも素晴らしい音楽を奏でます。ですがクラシック音楽は西洋音楽の歴史の中で理屈の積み重ねで発展してきたものです。理屈を無視して演奏しても説得力のある音楽には成り難いのです。理屈というと難しそうに感じるかもしれませんが、基本は単純なことだったりしますので知っていると演奏に役立つ要点を書いてこうと思います。



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